家は、家族が安心して過ごす大切な場所です。

その一方で、小さな子どもにとっては、大人には何でもない家具や日用品が、思わぬ事故につながることがあります。

  • 昨日までは手が届かなかったのに、今日は棚の上の物を取っていた
  • まだ開けられないと思っていた窓の鍵を、自分で開けていた

子どもの成長はうれしいものですが、できることが増えるたびに、家の中で注意したい場所も変わります。

こども家庭庁の資料では、2020年から2024年までの子どもの不慮の事故による死亡のうち、0~4歳が半数以上を占めています。また、交通事故を除く子どもの不慮の事故は、家庭内で多く発生しています。

これは、保護者を責めるための情報ではありません。

子どもは、好奇心を持って周囲を確かめながら成長します。一方で、危険を予測したり、途中で行動を止めたりする力は、まだ発達の途中です。

だからこそ、子どもに何度も「触らないで」「登らないで」と伝えるだけでなく、事故が起きにくい環境を先に整えておくことが大切です。

この記事では、子どもの家庭内事故のリスクを減らすために、家の中で確認したいポイントを場所別に紹介します。

家庭内事故は「見守り」だけでは防ぎきれません

子どもの行動を24時間、一瞬も目を離さずに見守ることはできません。

料理をする時、洗濯物を干す時、きょうだいの世話をする時、トイレへ行く時など、短い時間でも子どもから目が離れることはあります。

大切なのは、保護者が常に緊張し続けることではなく、次の順番で環境を整えることです。

  1. 事故につながる物を取り除く
  2. 子どもが近づけないようにする
  3. 家具を固定し、扉や窓をロックする
  4. 大人が見守り、子どもにも安全な行動を伝える

こども家庭庁も、安全な製品を選び、正しく使用して子どもの周囲の環境を整えることで、事故予防につながると案内しています。

安全対策用品を使う場合も、取り付ければ終わりではありません。対象年齢や使用方法を確認し、緩み、破損、外れがないかを定期的に点検しましょう。

寝室・寝具|乳幼児の窒息と転落を防ぐ

特に0歳の子どもは、就寝中の窒息に注意が必要です。

やわらかい寝具、掛け布団、ぬいぐるみ、衣類、スタイなどが口や鼻を覆ったり、大人用ベッドと壁の隙間に顔が挟まったりする事故が起きています。

就寝環境で確認したいこと

  • 敷布団やマットレスは硬めの物を使う
  • 1歳までは、寝かせる時にあお向けにする
  • 顔の近くに掛け布団、枕、ぬいぐるみ、衣類などを置かない
  • できるだけ安全基準に合ったベビーベッドを使用する
  • ベビーベッドの柵は常に上げる
  • ソファの上で寝かせない
  • 大人用ベッドと壁、後付け柵の間に隙間を作らない

こども家庭庁は、2歳になるまでは、できるだけ大人用ベッドを避けることや、大人用ベッドに取り付ける幼児用ベッドガードを生後18か月未満の乳幼児に使用しないことも呼びかけています。

おむつ交換台やベビーベッドの上では、「まだ寝返りをしないから大丈夫」と考えず、必要な物を先にそろえましょう。使用済みのおむつを捨てる時も、先に子どもを安全な場所へ降ろします。

リビング|転倒・転落・家具の転倒を防ぐ

リビングは家族が長く過ごす場所ですが、子どもにとっては、登ってみたくなる物、引っ張ってみたくなる物が多い場所でもあります。

子どもは、引き出しを階段のように使って家具へ登ることがあります。タンスや棚、テレビ台などが倒れると、下敷きになって重大なけがにつながるおそれがあります。

家具まわりで確認したいこと

  • タンス、棚、テレビ台などを壁や下地へ固定する
  • 引き出しや開き扉にストッパーを付ける
  • 重い物を家具の上部に置かない
  • 子どもが家具へ登る足場になる物を置かない
  • テーブルや家具の鋭い角にはクッション材を付ける
  • ソファや椅子の上に子どもだけを残さない

家具の固定は地震対策だけではなく、子どもがよじ登った時の転倒防止にもつながります。

ひもやコードにも注意する

ブラインドやカーテンのひも、電源コードなどが首に巻き付くと、窒息につながるおそれがあります。

ひもは子どもの手が届かない高さでまとめ、家具やベッドをブラインドの近くに置かないようにしましょう。

スマートフォンなどの充電器では、端子やコンセント部分に触れて、感電ややけどにつながる事故も報告されています。使用していない充電器は片付け、コンセントカバーを使う場合は、子どもが簡単に外せない製品を選びます。

誤飲・窒息|小さな物は「見えない・届かない・開けられない」場所へ

乳幼児は、手に取った物を口に入れて確かめることがあります。

床に落ちた物だけでなく、低い棚、かばんの中、ゴミ箱、きょうだいのおもちゃなども確認が必要です。

特に注意したい物

  • ボタン電池
  • 強力な磁石、マグネット玩具
  • 水で膨らむ吸水ボール
  • 洗剤、化粧品、入浴剤
  • たばこ、加熱式たばこ、吸い殻
  • 酒類
  • 硬貨
  • ビーズや小さなおもちゃ
  • 包装フィルム、シール
  • 取り外せる小さな部品

ボタン電池は食道にとどまると短時間で組織を傷つけることがあり、複数の磁石は腸管を挟んで穴を開けるなど、重大な事故につながるおそれがあります。

誤飲を防ぐためのポイント

  • 手が届かないだけでなく、子どもの目にも触れにくい場所に保管する
  • 薬や洗剤は鍵やロックのある収納に入れる
  • 飲料用の容器に洗剤などを移し替えない
  • 使用済みのボタン電池もすぐに回収して保管する
  • 電池を使う製品は、電池カバーが簡単に開かないか確認する
  • おもちゃの対象年齢を守る
  • きょうだいの小さなおもちゃを乳幼児の遊ぶ場所へ持ち込まない
  • 床を子どもの目線で定期的に確認する

「棚の上に置いたから安心」ではなく、椅子や箱を使って登るようになった時期には、収納方法をもう一度見直しましょう。

キッチン・食卓|やけど、切り傷、誤飲を防ぐ

キッチンには、熱い物、刃物、洗剤などが集まっています。

可能であれば、ベビーゲートなどを使い、乳幼児が大人のいない状態で入れない環境を作ります。

熱い飲み物や汁物

お茶、みそ汁、スープ、カップ麺などは、子どもの皮膚にかかると重いやけどにつながることがあります。

  • 熱い物はテーブルの中央に置く
  • 子どもを抱っこしたまま熱い物を扱わない
  • テーブルクロスや垂れ下がるランチョンマットを使わない
  • 鍋やフライパンの取っ手を通路側へ出さない
  • 調理中は、できるだけ奥側のコンロを使う
  • 配膳前に、子どもが通る場所を確認する

こども家庭庁も、熱い飲み物や汁物をテーブルの中央へ置き、テーブルクロスなどを使用しないよう案内しています。

電気ケトル・炊飯器・家電

電気ケトルのコードを引っ張ったり、ケトルにつかまり立ちをしたりすると、倒れた本体から熱湯を浴びることがあります。

  • 電気ケトルやポットは、コードを含めて手の届かない場所へ置く
  • 転倒しても湯がこぼれにくい製品を選ぶ
  • 炊飯器の蒸気口へ手を伸ばせない配置にする
  • ウォーターサーバーのチャイルドロックを確認する
  • アイロンやヘアアイロンは、使用後も冷えるまで手の届かない場所へ置く

電源を切った直後でも、アイロンなどは高温です。コードを床や台から垂らしたままにしないことも大切です。

包丁・キッチンばさみ

  • 使い終えた刃物はすぐに片付ける
  • 引き出しや収納扉にロックを付ける
  • 食器洗い機へ刃物を入れる時は、子どもが触れない状態にする
  • 調理中にその場を離れる場合も、刃物を台の端へ置かない

「あとで片付けよう」と短時間置いた物に、子どもが手を伸ばすことがあります。使い終わったら、その都度収納する習慣が事故予防につながります。

食事中|食べ物による窒息を防ぐ

家庭内の窒息事故では、食事中にも注意が必要です。

食べ物の大きさや硬さだけでなく、姿勢や食べ方も関係します。

  • 年齢や発達に合った大きさ・硬さにする
  • 座って、落ち着いて食べる
  • 口に食べ物が入った状態で歩いたり、走ったり、遊んだりしない
  • 一度に多く詰め込ませない
  • よくかんで食べるように伝える
  • 食事中は大人が様子を見る
  • 泣いている時や眠そうな時に無理に食べさせない

ミニトマト、ぶどう、球形のチーズなど、丸くてつるりとした食品は、年齢に応じて小さく切るなどの対策が必要です。食事中の窒息は、特に低年齢の子どもで注意が必要とされています。

窓・ベランダ|補助錠と家具の配置を見直す

窓やベランダからの転落事故は、子どもが窓の近くにある家具へ登ったり、網戸へ寄りかかったりした時にも起こります。

網戸は、子どもの体重を支える安全柵ではありません。

窓の対策

  • 子どもの手が届かない位置に補助錠やストッパーを設置する
  • 窓を大きく開けられないようにする
  • 窓の近くにベッド、ソファ、机、椅子、収納箱を置かない
  • 網戸へ寄りかからないことを伝える
  • 子どもだけを窓の開いた部屋に残さない

ベランダの対策

  • ベランダを遊び場にしない
  • 子どもだけでベランダへ出られないようにする
  • 植木鉢、椅子、箱など、足場になる物を置かない
  • 室外機は手すりから離して設置する
  • 補助錠が正常に機能するか定期的に確認する

こども家庭庁は、室外機を手すりから60センチ以上離して設置するか、上からつるすことを案内しています。また、短時間であっても、子どもだけを家に残して外出しないことが重要です。

浴室・洗面所|少量の水でも油断しない

子どもの溺水は、浴槽で多く発生しています。浅い水でも、子どもは転倒して顔を上げられなくなることがあります。

入浴中の対策

  • 子どもは大人より後に浴室へ入れる
  • 入浴後は子どもを先に浴室から出す
  • 大人が髪を洗う時は、子どもを浴槽から出す
  • 着替えやタオルは入浴前に準備する
  • 浮き輪や浴槽用いすを、見守りの代わりにしない
  • きょうだいだけで浴槽に入れない

「少しの間だから」と着替えを取りに行く数十秒でも、事故は起こり得ます。こども家庭庁は、大人が洗髪する時に子どもを浴槽から出すことを呼びかけています。

入浴後の対策

  • 可能であれば浴槽の水を抜く
  • 浴室の扉に、子どもが操作しにくいロックを設ける
  • バケツや洗面器に水をためたままにしない
  • 洗濯機のふたを閉め、子どもが中へ入れないようにする
  • 洗濯機の近くに踏み台になる物を置かない

浴室以外でも、バケツ、洗面器、洗濯機など、水のある場所を定期的に確認しましょう。

玄関・室内ドア|指挟みを防ぐ

ドアの取っ手側だけでなく、ちょうつがい側の隙間でも指挟み事故が起こります。

  • ドアを閉める前に、子どもの手や体が近くにないか確認する
  • ちょうつがい側に隙間防止カバーを設置する
  • 風で急に閉まらないようにする
  • 子どもにドアで遊ばないよう伝える
  • 玄関ドアを開閉する時は、きょうだいの位置も確認する

指挟み防止用品を使う場合は、定期的に剥がれや破損がないかを確認してください。

階段・廊下|近づけない環境と整理を優先する

階段では、転倒や転落によって頭を強く打つことがあります。

  • 発達に合ったベビーゲートを正しく設置する
  • 階段の上下に物を置かない
  • 手すりを持ってゆっくり上り下りすることを伝える
  • 階段で走ったり、遊んだりしない
  • 床におもちゃやコードを放置しない
  • 濡れた床はすぐに拭く
  • 夜間も足元が見えるようにする

ベビーゲートは、取り付け場所や階段の形状に合う製品を選び、取扱説明書に沿って設置しましょう。

歯磨き|歯ブラシをくわえたまま歩かない

歯ブラシを口に入れた状態で転倒すると、喉の奥に刺さり、大きなけがにつながることがあります。

  • 歯磨きは床や安定した場所に座って行う
  • 歯磨き中は大人が近くで見守る
  • 歯ブラシをくわえたまま歩かせない
  • 喉突き防止の工夫がある子ども用歯ブラシを選ぶ
  • 箸、フォーク、スプーンなどを口に入れたまま歩かせない

こども家庭庁も、子どもを座らせて歯磨きを行い、保護者がそばで見守るよう呼びかけています。

子どもの成長に合わせて、安全対策を見直しましょう

安全対策は、一度行えば終わりではありません。

次のような成長の節目には、家の中をもう一度確認しましょう。

  • 寝返りを始めた
  • はいはいを始めた
  • つかまり立ちを始めた
  • 一人で歩き始めた
  • 椅子や箱を動かせるようになった
  • 窓や扉を開けられるようになった
  • 高い場所へ登れるようになった

こども家庭庁の事故防止ハンドブックも、子どもの運動機能の発達に伴って、起こりやすい事故が変化すると説明しています。

また、自宅だけではなく、祖父母の家、旅行先、宿泊施設、友人宅など、普段と異なる場所でも確認が必要です。慣れない場所では、浴室やベランダの鍵、小さな物、薬などが、普段と違う場所に置かれていることがあります。

今日からできる「おうち安全チェック」

すべてを一度に変える必要はありません。

まずは、子どもの目線までしゃがみ、次の10項目を確認してみてください。

  • 床に口へ入る大きさの物が落ちていないか
  • 薬、洗剤、電池、磁石を子どもが取り出せないか
  • 家具やテレビ台が固定されているか
  • 窓の近くに登れる家具がないか
  • ベランダに踏み台になる物がないか
  • 熱い物や家電のコードに手が届かないか
  • 浴槽やバケツに水を残していないか
  • 階段やキッチンへ一人で入れないか
  • ドアのちょうつがい側に指を入れられないか
  • 年齢や発達に合わなくなった安全対策がないか

今日一か所を見直すことでも、事故のリスクを減らす一歩になります。

万が一、事故が起きた時は

意識がない、正常に呼吸していない場合

すぐに119番通報し、電話をスピーカーにして救急隊の指示に従います。必要に応じて心肺蘇生を始めます。

食べ物や物が喉に詰まった場合

声が出ない、強くせきができない、呼吸が苦しそうな場合は、周囲の人に119番通報を依頼し、年齢に合った異物除去を行います。乳児と1歳以上では方法が異なるため、地域の救命講習などで事前に練習しておくと安心です。

やけどをした場合

すぐに10~20分を目安に冷やします。服の上から熱湯がかかった場合は無理に脱がせず、服の上から冷やします。広範囲、顔のやけど、強い症状がある場合は、すぐに119番通報または医療機関を受診してください。市販の冷却シートは、やけどの手当てには使えません。

薬や洗剤などを誤飲した場合

飲んだ物によっては、吐かせることで状態が悪化することがあります。自己判断で無理に吐かせず、商品の容器や成分表示を手元に置いて、医療機関または中毒110番へ相談してください。

中毒110番・一般専用電話(24時間・無料)

  • 大阪中毒110番:072-727-2499
  • つくば中毒110番:029-852-9999

夜間や休日に、受診した方がよいか判断に迷う場合は、全国共通の子ども医療電話相談 #8000も利用できます。ただし、意識や呼吸に異常があるなど緊急性が高い場合は、迷わず119番通報してください。

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